Santos  Pastry School Blog
サントスシェフのオンラインお菓子教室ブログ

【シェフの技】秋のスイーツは「温度・香り・色」で差がつく

Sep 23, 2025
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秋の風味設計:火入れと香りで変わるお菓子作りの奥深さ

夏の爽やかなスイーツから一転、秋はこっくりとした温かみのある味わいが恋しくなります。実は、同じ砂糖、小麦、乳製品を使っていても、火加減や香りの引き出し方、そして色の使い方ひとつで、まったく違う表情が生まれるのです。

サントス・パティスリースクールでは、この季節ならではの「風味の設計」を大切にしています。創設者であるシェフ・アントワーヌ・サントスが提唱する「温度、香り、色」の3つの要素をマスターすれば、ご家庭のキッチンでもプロのような奥深い味を作ることが可能です。

秋の主役は「温度」と「香り」と「色」

夏のスイーツが「冷たさ」や「酸味」で甘さを引き立てるのに対し、秋は「加熱」が決め手となります。砂糖をじっくり加熱して琥珀色にするカラメル化、バターを焦がして香ばしい香りを引き出すブール・ノワゼット、そしてナッツをローストして油分がにじむまで香りを立たせること。これらを駆使することで、甘さに深みと奥行きが生まれます。

シェフはこれを、時間ではなく「色」で判断します。

  • カラメル:175〜185℃で美しい琥珀色に。
  • 焦がしバター:泡が細かくなり、ヘーゼルナッツのような香りがしたら。
  • フルーツのシロップ煮:赤ワインのルビー色からボルドー色へ。

これらの変化を見逃さず、少し手前で火から外すのが成功の鍵です。

旬の素材を使いこなすヒント

秋の主役といえば、やはり果実、木の実、はちみつです。フランスの伝統的なお菓子で使われる素材を、日本で手に入る品種に置き換えるコツをご紹介します。

りんご

タルト・タタンのようにしっかり加熱するなら、酸味があって煮崩れしにくい紅玉グラニースミスがおすすめです。香り高く、甘みと酸味のバランスが絶妙です。

フランスのシャテーニュ(仏栗)は粉質で香りが強く、ペースト向きです。一方、日本の和栗は水分が多く繊細な甘さが特徴です。両方を混ぜて使うと、和栗の軽さと仏栗の香ばしさの良いとこ取りができます。例えば、和栗7:仏栗3の割合でブレンドすると軽やかな食感に、5:5にするとよりリッチな味わいになります。

くるみとヘーゼルナッツ

くるみは、低温でじっくりローストすると渋みが抜けて香ばしさが際立ちます。ヘーゼルナッツは、150℃くらいでローストし、熱いうちに布でこすって薄皮を落とすと雑味がなくなり、より洗練された味わいになります。

方法・検証条件

  • カラメル:鍋底の余熱で3〜5℃温度が上昇するため、目標温度の少し手前で火から外すのがコツです。
  • 焦がしバター:加熱の進行を素早く止めるため、泡が細かくなり香りが立ったらすぐに鍋底を氷水に当てます。
  • フルーツやナッツのロースト:家庭用オーブントースターを使用する場合、130〜150℃相当の温度で、途中で一度混ぜてムラを防ぎます。

私たちは、こうした実践的な工夫と科学的な根拠に基づき、失敗を回避するための具体的な方法をカリキュラム内で提供しています。サントス・パティスリースクールについてはこちらからご覧いただけます。

秋色と食感のデザイン

味だけでなく、見た目でも秋を表現してみましょう。

  • 色合い:琥珀色のカラメル、ボルドーの赤ワイン、アイボリーの生クリーム、深緑のピスタチオを組み合わせると、落ち着いたトーンになります。
  • 食感:「カリッ」としたサブレやナッツ、「クリーミー」なクリーム、「みずみずしい」フルーツの3つの食感を組み合わせることで、食べ飽きない一皿になります。

注意事項

お菓子作りの際は、火傷などに十分ご注意ください。特にカラメルは高温になります。小さなお子様がいるご家庭では、手の届かない場所で作業してください。

参考情報(References)

本記事の技術的知見は、以下の文献・研究機関の情報を参考にしています。

  1. Larousse Cuisine: Sucre chauffé et caramelisation
  2. Le Cordon Bleu: How to make caramel
  3. INRAE: La réaction de Maillard

プロの技術を、あなたのキッチンへ

料理は理論だけでは面白くありません。ぜひ、小さな実験から始めてみましょう。スプーン1杯の砂糖を小鍋で熱して、お好みのカラメル色を見つけてみるだけでも、多くの発見があります。こうした小さな経験の積み重ねが、やがてあなたのスイーツ作りを特別なものにしてくれます。

サントス・パティスリースクールでは、こうした「なぜ?」という疑問を解決し、失敗を避けるための具体的な方法を、テキストと動画で分かりやすく解説しています。秋の代表的なお菓子「ルレ・マロン」のカリキュラムでは、和栗とナッツの食感設計、キャラメルの色管理など、プロの視点から体系的に学ぶことができます。

▶︎ 「ルレ・マロン」の詳細はこちら

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